がんばってきたあなたへ贈るトイアンナの「生きづらさ」診療所 104
著/トイアンナ
こんにちは、トイアンナです。自分で言うのもなんですが人生の前半はけっこうズタズタな生き方をしておりました。そして気づかされたのですが、泣くべきときに涙の在庫がないことって、けっこうあるんですよね。大好きな人が離れていってしまったとき、もう会えないとわかっている人とのさよなら、彼の浮気現場。
人生で泣くチャンスはいくらでも転がっているのに、涙が出てこないことってあるものです。
間に合わない涙は、あとからちゃんとやってくる
特に大事な人が亡くなったときなど「泣けない自分は大丈夫なのか」と不安になるものです。私自身、今年の1月に離婚したとき涙が出ずあせりました。こんなに泣いていない自分はサイボーグか何かじゃないかと。
数年前に大好きな祖父が死んだときも、ぼーっとしていました。祖父が死んだ事実を実感できなかったのです。そのまま職場へ復帰して普通に仕事しながら「私って人間なのか?」と不安になりました。
けれど涙は、準備ができたら溢れてくるものです。ある日、秋葉原駅で唐突に祖父を思い出して涙がドバドバあふれ出しました。きっかけなんてありません。ただ急に「来た」のです。そのまま電車にも乗れず、エスカレーターの手前で泣き続けました。
同じ場所にいた方はギョっとしたことでしょう。これが映画館や劇場なら「余韻にひたってるのかな」と想像してもらえたでしょうが、秋葉原駅はあんまり号泣スポットでもないですから……。でも私にとってはようやく祖父について号泣する涙の在庫がそろったタイミングで、それはどこでもよかったのです。
いま涙が出ないのは、まだ在庫が足りないだけ
ですから悲しいことがあって泣けない人も、自分を冷たいだとか、悪い人間だと思わないでください。ちょっと涙の生産が遅れているだけなのです。涙には準備がいります。すぐ泣ける人もいれば、ある日やってくる人もいます。
涙を流すから、愛していた証拠になるのではありません。悲しそうに見える人だけが、悲しんでいるわけでもありません。悲しみかたは人それぞれでいいし、涙がいるわけでもないのです。
いつか準備が整ったら、涙は勝手にあふれてくるでしょう。そのときは思い切り泣いてあげてください。失った人やもののためにではありません。あなたがしっかり悲しみを味わって、その悲しみごと引き連れた、複雑で豊かな人生をおくるためにです。
トイアンナとは?
人気コラムニスト, ライター。ブログ『トイアンナのぐだぐだ』をはじめ、人の生きざまを分析する文章でファンを獲得し月間50万PVを記録。
http://toianna.hatenablog.com/
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