がんばってきたあなたへ贈るトイアンナの「生きづらさ」診療所 36

こんにちは、トイアンナです。「シンプルで丁寧な暮らし」「好きなものだけを家に集めたい」なんてフレーズがちょっとした記事でも目につきます。具体的な収納術を駆使して下着類まできれいに並べているご自宅の写真を見ると、なんだか自分は家事ができていないような気になりませんか?

清潔感あるタイルと観葉植物 

かく言う私の家もけっこうなひどさです。洗濯は週に2回。アイロンがけしなくてはいけない衣類はロッキングチェアに積み重なってます。オシャレインテリアがまさかの衣類置き場に。

生きづらさ診療所36

料理も加工品が料理にバンバン登場しますし、つい最近のツイートはこのざま。なけなしの収納は予備のトイレットペーパーでいっぱいだっつーの。とてもじゃないけれど、シンプルで丁寧な暮らしなんてできません。

わびさびは貴族の遊び

しかしよく考えてみると、丁寧とかシンプルっていうのは時間がたっぷりある人のぜいたくです。元祖・シンプルで丁寧な暮らしとも言える「わびさび」を編み出した千利休は、当時日本一リッチな豊臣秀吉の側近でした。1日中好きなことをしても生きていける身分になって初めて「モノは無い方がいい」「家はすっきり見せたい」などと思えるわけです。当時の農民に同じことを言ったら「アホか、うちは一本でも多く農具がほしいわ」と叱られたに違いありません。

これを読んでいるあなたが日本一リッチな方だったら申し訳ないですが、普通の人は1日何時間も働いてて、家族がいればスキンシップも必要です。シンプルや丁寧を考えるより明日スーパーで買ってくる食材の話でしょう。ガス代や電気代の前に、私たちは無力です

雑でも「楽しく」生きられる

ですからシンプルで素敵な暮らしをメディアで見かけたら「ああ、豊臣家はそうなんですね」と思っておきましょう。よそはよそ、うちはうちです。地に足の着いた楽しみもあります。気に入った消臭剤の香りが見つかったとか、新しい酎ハイが美味しかったとか。それは雑な暮らしですが、心が楽になる暮らしです

出来合いのお惣菜を使ったっていいじゃない。洗濯がまとめて週に1度だって大丈夫。まずは今日明日を楽しく生きることが、いつかどこかで「シンプルがいい……」の境地にたどり着く第一歩。「添加物はだめ」「毎日家を掃除しなきゃ」と自分を追い詰めることなく、雑な暮らしをしましょう。そして楽しく暮らしましょう。




トイアンナとは?
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人気コラムニスト, ライター。ブログ『外資系OLのぐだぐだ』をはじめ、 人の生きざまを分析する文章でファンを獲得し月間50万PVを記録。
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